オオサンショウウオ、「生息図」変わる? 異例の広域調査へ

オオサンショウウオ、「生息図」変わる? 異例の広域調査へ

産経新聞 5月10日

奈良県御所(ごせ)市の用水路で昨年夏に偶然見つかった国の特別天然記念物オオサンショウウオを一時保護している同県橿原市の市昆虫館が、生息地を特定するため今夏、初めて捜索区域を近接する吉野川水系に拡大する。近畿の繁殖地は三重県兵庫県などに限られるとされ、奈良県南部で確認された公式の記録はない。文化庁は「西日本の“生きた化石”の生息地図が塗り替えられる可能性もある」と捜索結果に期待している。(植木芳和)


 保護されているオオサンショウウオは、全長1・1メートル、体重13・4キロの雄1匹。野生の場合、体長が1メートルを超えるのは珍しいといい、昨年8月下旬、御所市の曽我川支流の用水路で見つかった。

 同館は生息地を特定するため昨年9~11月、発見場所と水路がつながる大和川水系曽我川や葛城川、飛鳥川、寺川などの支流約20キロに捕獲用のわなを仕掛けたが、成果はなかった。

 捜索範囲について調査許可の権限がある文化庁と協議し、吉野川水系に拡大することで合意した。吉野川曽我川と山の反対側に位置するものの距離は近く、国の補助金を活用し7月にも吉野川の支流延べ約50キロで調査に乗り出す。

 生息地を探索する前例のない広域調査に向け、市昆虫館では職員やボランティアら数十人を動員。冷凍イワシやサンマなどをエサに、捕獲用の網かごを夕暮れ時に河川に仕掛け、朝方に回収する計画だ。

 同館は「大和川水系では生息地を発見できなかったが、未開の吉野川水系に期待を寄せている。いずれは保護しているオオサンショウウオを元の巣に放流したい」と話す。

 文化庁によると、吉野川水系では過去に目撃報告はあるものの、公式な記録はない。

 同庁は「貴重な生態を明らかにし、生息地を特定して保護活動に努めたい」としている。

 オオサンショウウオの研究を続けるNPO法人「日本ハンザキ研究所」の栃本(とちもと)武良所長の話「近畿のオオサンショウウオの分布は、奈良だけが事実上の空白地帯。奈良を横断する吉野川水系で生息地が確認できれば、新たな発見として非常に喜ばしい。研究にも弾みが付くだろう」