イオンモール開業で変わる豊田駅 ―その知られざる過去

イオンモール開業で変わる豊田駅 ―その知られざる過去
 近頃、北口・南口共に再開発によって変貌している豊田駅周辺だが、過去にはさらに違った様相を呈していた時代もある。
 
 甲武鉄道に豊田停車場が設置されたのは1901年2月22日。当時宅地が並んでいたのは南口のみだった。
 戦後、1957年、設立して間もない日本住宅公団によって北口の開発が始まる。後のニュータウン建設の礎にもなる「多摩平団地」建設。多摩平団地は日本の集合住宅史の中で特に重要な団地である。これに合わせ、駅前通りの「多摩平名店街」も生まれた。
 そして豊田駅前には伊勢丹、丸井、高島屋ストアという今では想像もつかない店が軒を連ねていた。この頃が豊田駅の最盛期かもしれない。
 この頃、多摩地区の中でいち早く、豊田駅スクランブル交差点が出来た。
 
 1974年、西友豊田店が開店、後に伊勢丹や丸井は姿を消す。高島屋ストアは京王ストアへ変わった。それから豊田は西友京王ストアの時代が長く続く。いつの間にか駅前は閑静になり、百貨店が並んでいた光景など想像もできない姿となった。
 
 1997年、老朽化した多摩平団地の建て替え事業が始まった。多摩平団地は「多摩平の森」へと変貌を遂げてゆく。再開発が進み、2011年、一部区画を残して多摩平名店街が潰され、京王ストアや商店が閉店した。豊田駅前は昭和最盛期の象徴の多くを失くした。通行人の疎らなスクランブル交差点を除いて。
 また、再開発の影響かどうかは不明であるが、2013年末には南口のシャノアール豊田店が閉店している。
 
 名店街及び裏の団地跡地にはイオンモールが進出することとなる。2014年、半世紀以上続いていた蕎麦屋など、名店街で残っていた数店も閉店。そして11月、イオンモール多摩平の森が堂々オープン。グランドオープンを前にして、現在豊田駅前は人で溢れかえっている。あのスクランブル交差点を大勢の人が渡る光景が再び豊田に訪れたのである。
 
 これからさらに活気を取り戻してゆくのか否かはさておき、豊田が転換点に立っていることは確かである。今後さらに進む再開発も伴って、豊田は新たな時代へと突き進む。(錦鮒出版編集部)
 
 
 
かつての多摩平名店街風景
多摩平名店街
2010年当時の多摩平名店街(Googleストリートビュー)
既に多くが店が閉めたり移転したりしていた。
 
過去の豊田駅前スクランブル交差点には京王ストアが見える
 
2010年当時の豊田駅スクランブル交差点(Googleストリートビュー)
 
かつての豊田駅南口の風景、シャノアール豊田店
 
 
建設中のイオンモール多摩平の森
建設の進むイオンモール(2014年4月・筆者撮影)
 
 
マンション建設中の多摩平交番前交差点
多摩平交番前交差点(2014年5月・筆者撮影)
イオンモール建設地の隣、多摩平交番の裏ではマンションの建設が同時に進められていた。多摩平交番も後に建て替えられることになる。
 
 
最後まで営業を続けていた多摩平名店街
裏でイオンモール建設が進む中、営業を続けていた商店(2014年5月・筆者撮影)
これらの店は、イオンモール開業直前まで営業を続けた。
 
 
建設が進み姿を現したイオンモール多摩平の森
姿を露わにしたイオンモール(2014年8月・筆者撮影)
 
過去の日野多摩平郵便局
 
日野多摩平郵便局(2014年11月・筆者撮影)
開業直前までこの建物で営業し続けたが、イオンモール内へと移転した。
 
 
 
閉店していく多摩平名店街の店
54年間営業を続けてきた多摩平名店街の店舗
営業を終えた名店街の店(2014年11月・筆者撮影)
昭和34年は多摩平団地の完成直後にあたる。名店街の店には、その当時から営業し続けた店もあったのだ。
 
交番前バス停の名称はイオンモール多摩平の森に変更された
バス停の名称が「交番前」から「イオンモール多摩平の森」へ変わる(2014年11月・筆者撮影)
京王のダイヤ改正に合わせ、交番前交差点にあったバス停は名称が変わった。