漁網隙間から逃げる多摩動物公園のトキ大雪でたわみ

 多摩動物公園(日野市程久保)で絶滅危惧種のホオアカトキ(メス)が逃げ出してから1か月あまり。脱走経路を調査していた同園は、雪の重みで漁網の屋根が約20センチ幅でたわみ、その隙間が70~80センチにわたってできて、そこから逃げたと結論づけた。大雪による「予想外」の脱走だったが、同園では、隙間が出来ないよう縫いつけたり、個体の確認作業を増やすなどの対策を取った。(前村尚)
 「まさか、こんな所から」――。飼育展示課の渡部浩文課長は、調査結果に驚いた。ネットのつなぎ目部分は通常、隙間が生じることはない。だが、脱走情報が寄せられた2月29日は10センチ以上の降雪があり、偶然にもトキに逃走の機会を与えた。「雪で驚いたホオアカトキが、外に飛び出てしまった」と同園はみている。
 トキ舎は斜面上に横並びで建てられ、ホオアカトキは真ん中のケージで、近縁種を含む5種48羽と共に飼育されていた。縦横12メートル、高さは低い所で3・5メートル、高い所で7メートルで、側面は金網で囲まれ、屋根はナイロン製の漁網で覆われている。
 脱走後、担当者らが調べたが、ケージに壊れた箇所はなく、外に出るためには途中に金属製の扉3枚を開ける必要があるため、他の経路は考えられないという。渡部課長は「エサが毎日与えられる安全なケージから、わざわざ外に出ていくことは考えにくい」と偶発的な脱走だったと説明する。
 今回の脱走を受けて、同園はネットの結び目の間隔をなくすように縫いつける対策を施した。さらに、飼育動物の足輪に書かれている個体番号とリストの突き合わせ作業回数を、これまでの年1回程度から複数回に増やす方針だという。
 一方で、逃げたホオアカトキの手がかりはない。3月28日までに約50件の情報が寄せられたが、くちばしや体毛の色が違ったりして、カワウやサギの見間違いが約40件近くある。
 3月17日には日野市豊田で、「昨日、顔の赤いカラスを見た」との情報が寄せられたが、発見には至っていない。
 脱走したホオアカトキは、2007年に同園で生まれた個体で、ペレットやドジョウなどを与えられて育ったため、野生化でのエサの取り方などは知らない。渡部課長は「寒い時期はエサになる魚や昆虫は少ない。カラスなどに攻撃されてしまう可能性もあり、生存も危ぶまれる」と、情報提供を呼びかけている。
 左右の足には水色のリングを着けており、S―1023の番号が記されている。情報は同公園((電)042・591・1611)へ。
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(2012年4月4日  読売新聞)