桐朋中高生 昆虫学会発表へ

 桐朋中学高校(国立市)の生物部員が、3年にわたって調査・研究してきたハグロトンボの生態について、24日に東京農業大学厚木キャンパス(神奈川県厚木市)で行われる日本甲虫学会と日本昆虫学会関東支部の合同大会で発表する。都市部で個体数が回復した背景を明らかにしたもので、専門家も評価している。
 発表の題名は「都市においてハグロトンボはなぜ繁栄するか?」。近年、水質が改善した都市部の水辺で、一度は減っていたハグロトンボの個体数が、他のトンボに先駆けて増える事例が相次いでおり、背景にあるハグロトンボの性質を検証した。その結果、他と比べ、雄と雌が比較的狭い空間を共有しながら生きている傾向にあり、土地の少ない都市部に適していることを指摘。また、産卵や発生が長期間に分散されていることが、変化の起きやすい都市部で危険を回避するのに役立っていると結論づけた。
 調査のきっかけは、2011年、くにたち郷土文化館(国立市)が、市民と「ハグロトンボ調査隊」を結成したこと。同部はそれまでも魚の調査などをしており、同館の誘いで調査隊に加わり、中心メンバーとして活動してきた。
 調査は毎年6~10月の毎週日曜、国立市などを流れる府中用水のうち、同館近くの一定区間(800メートル)で行われた。網を片手に水辺を歩き、ハグロトンボを見つけたら捕獲。初めて捕まえた際、白インクで羽に数字を書いて個体を区別し、その後に再び捕まえた位置や、成長の度合いなどを記録する地道な作業を繰り返した。
 見つけたハグロトンボは3年間で1300匹以上。同館の斉藤有里加学芸員は「部員たちは暑くてへばっていたときもあったけれど、よく続けてきた」と振り返る。こうして集まったデータを検証。天候などによる誤差を加味する統計的な分析を行うなどした結果、ハグロトンボの性質が見えてきた。
 指導した東京農業大の田口正男・客員研究員は「都市部に自力で戻ってくるハグロトンボの性質を明らかにすることは、生物多様性や環境の再生が注目されている昨今、大変意義のある研究だ」と話す。
 調査隊の活動は今年で終わりだが、同部の宮下彰久教諭は「身近なフィールドで、地元の方と一緒に活動できたことは価値がある」と話す。浅野聖大主将(高1)も「今後は、部としてハグロトンボの調査を継続したい」と意気込んでいる。
(2013年11月23日  読売新聞)