大雪影響 ハウス被害、多摩地区750棟

大雪影響 ハウス被害、多摩地区750棟

 今月に入っての記録的な大雪は、多摩地区の農家にも大きな爪痕を残した。雪の重みで農業用ビニールハウスが損壊して農作物が被害を受けたほか、露地栽培の野菜も収穫不能となったり、商品価値がなくなったりする被害が相次いでいる。都やJAも被害の把握を急いでいるが、全容はつかめていない。

 今回の大雪で特に大きな被害を受けたのが、ハウスで栽培するトマトなどの農作物だ。JA東京中央会(立川市)によると、19日現在、多摩地区で倒壊したり、破損したりしたハウスは約750棟に上り、今後も増える見込みという。

 日野市平山の馬場裕真さん(30)の畑では、トマトの苗1000株を育てていたハウス1棟が雪の重みで倒壊し、4月に植え替えるための苗が全滅した。実をつけている7棟のハウスは無事だったが、植え替えの苗がなくなったことで、6月の収穫は絶望的になった。近所には4月に収穫を迎える予定のトマトが全滅した農家もあるという。

 清瀬市中清戸の松村新一さん(66)の畑でも、ハウス1棟が押し潰され、コマツナが被害を受けた。収穫の時期を迎えた露地栽培のニンジンやホウレンソウの畑も一面雪に埋もれ、収穫ができない状況が続いている。松村さんは「ホウレンソウは雪に埋まって軸が折れ、商品価値がなくなってしまったものもある。寒さや雪に強い野菜でも、この大雪ではひとたまりもない」と肩を落としていた。

 東村山市恩多町の金子等志さん(36)のブドウ畑でも、雨よけに設置している約500平方メートルのハウスが雪の重みで潰れた。ブドウ棚には幸い目立った被害はないが、雨に当たると病気になりやすい品種のため、収穫への影響が予想されるという。金子さんは「(骨組みに使う)鉄の資材価格が高騰していると聞く。いくらかかるのか、いつ直せるのか、見当もつかない」と嘆く。

 大雪の被害は酪農でも出ている。都酪農業協同組合(瑞穂町)によると、八王子市内では、雪の重みで子牛を飼育する畜舎の屋根が落ち、子牛が死ぬ事故があった。道路の通行止めで生乳を工場へ運ぶ手段がなくなって、やむを得ず生乳の廃棄を余儀なくされた農家もおり、同組合の清水陸央副組合長(55)は「国や都に大雪の被害対策をお願いしたい」と訴える。

 大雪による農業への被害について、都農業振興課は「都全域に及ぶ大規模な被害は近年なかった」としている。同課は現在、被害調査を進めており、「調査を終え次第、農家に対する支援策をとりまとめたい」としている。

(2014年2月20日  読売新聞)