中国起源の外来種? ニホンヤモリやクサガメ

中国起源の外来種? ニホンヤモリクサガメ 人博の調査
 日本の在来種とされてきたニホンヤモリクサガメ外来種である可能性が高いことが、兵庫県人と自然の博物館三田市)の太田英利主任研究員(52)らの調査で明らかになった。太田研究員は「中国南東部から持ち込まれ、分布を広げていったのでは」とみている。

 ニホンヤモリは一般の民家でよく見かけるトカゲ目の爬虫(はちゅう)類。江戸時代にシーボルトが帰国する際に欧州へ持ち帰り、その後、フランスの研究者により学名が付けられたとされる。
 太田研究員らが全国各地の個体の遺伝子を解析したところ、違いはほとんど見られず、中国大陸のものと類似していることが判明した。歌集や文献を調べると平安以前の時代では登場しておらず、遅くとも平安時代以降に大陸から持ち込まれた可能性がある。
 ニホンヤモリの指は平たくて柔らかく、自力で冬眠用の穴を地面に掘れないことから、民家に暖房のなかった時代には冬を越せなかったとみられる。日本に根付いた理由について「現在でも、寒い地方では市街地だけに生息している。冬でもある程度暖かな民家の増加とともに分布を拡大したのでは」と分析する。
 一方、クサガメは全国の川や池に生息し、これまでイシガメと並ぶ在来種とされてきた。太田研究員が京都大のグループと調べたところ、DNA配列が中国産と類似し、18世紀初めまでの文献には記載がなかった。太田研究員は「いずれも今では日本人に親しまれた生物だが、交易などに伴い日本に運ばれた可能性が高い」と話す。
(篠原佳也)
神戸新聞 2012/04/13 09:47
ニホンヤモリ 実は外来種
九州から東北の広い範囲で住宅の軒下などに生息している「ニホンヤモリ」は、昔から日本に生息する在来種と考えられてきましたが、平安時代以降に中国から持ち込まれた外来種である可能性の高いことが、兵庫県立大学の調査で分かりました。
ニホンヤモリは、江戸時代末期に来日した医師のシーボルトが入手した標本を基に新種として報告されて以来、日本の在来種と考えられてきました。
ところが、兵庫県立大学の太田英利教授らのグループが、中国に生息するニホンヤモリと遺伝子を比較したところ、ほとんど違いはありませんでした。
比較的寒さに弱いニホンヤモリの生息場所は、中国では温暖な南東部の岩山などですが、日本ではほぼ例外なく住宅地などの人工的な環境で冬の寒さをしのげるところでした。
さらに平安時代末期以前の和歌や随筆にニホンヤモリを指す記述は見つかっていないことなどから、研究チームは、ニホンヤモリは、平安時代以降に中国との貿易船などを通して持ち込まれた外来種である可能性が高いとしています。
生物学の分野では、ここ十数年、遺伝子分析のコストダウンに伴う普及によって、クサガメなど長年身近な在来種と思われていた生物が外来種と分かるケースが相次いでいて、太田教授は「これまで常識と思われていた生物の由来が今後も変わっていく可能性がある」と指摘しています。
NHK 5月17日 13時1分