池の水ぜんぶ抜く大攪乱! 2/18

 

2月18日に岐阜県笠松町のトンボ天国にあるトンボ池で行われたテレビ東京池の水ぜんぶ抜く大作戦」第7弾の収録に,サークルメンバーとともに一般参加してきました.当日どのような状況にあったか,以下に記します.

この内容は本来はテレビ放映後に公開する予定でしたが,すでにネット上でイベント内容を疑問視する声が多く聞かれること,イベント未参加者の間で情報が錯綜していることから,当日に何があったか事実を公表する必要性があると判断したため,このタイミングでの公開に踏み切りました.
私は一般参加ではあったものの,他の参加者とは異なり,途中から知らぬ間に関係者の立場になっていたため,その特殊な立場からの報告も重要であると考えています.
そして,この報告が今後同じような事態を繰り返さないための一助,教訓になればと思います.

追記あり(橙色・2018/03/08)
主な関連人物一覧
・トンボ池を守る会
テレビ東京収録陣
NPO birth
・一般参加者(地元高校生・教員,大学生など)
・一般参加者(捕獲に参加しただけもしくはギャラリー)
・釣り人 →地元漁協関係者
 
[前提]
・私は番組を一度も見たことがないので,どういうものか知らない.
・イベントの告知がサークルメンバーに寄せられ,サークルの活動として希望メンバーが参加することに(一般参加).
・事前情報は,ネット上でも出回っていた告知ポスターのみ.
・以下の内容は,一般参加の立場で参加者に混じった状態で見聞きした内容に基づくことに留意.
・黒字:イベント内の状況・出来事 
・青字:個人的な行動・言動
・橙字:追記事項
9時過ぎ
現地には子供連れをはじめとした多数の人.
番組スタッフとみられる人物が,田中直樹氏が間もなく到着することを知らせる.
田中さんを出迎えるための練習を集まっていた人に促す.
イベントについての説明等はこの時点で無し.
9時半頃
田中さん到着.出迎えを受け,子供たちに囲まれる.
田中さんの撮影
田中さんは池やポンプの説明等をNPO案内者や主催者から受けていたとみられるが,この時点で一般参加者には今回のイベントの趣旨・目的・内容等の具体的な説明は一切なし
ポンプ稼働
池の周り2か所に排水され始める.片方は池の脇の河川敷に垂れ流し,もう一方は堀状の窪地へ(その後水が流れ出し,池周辺の歩道が浸水・池の脇に水流れ込む).
「排水が終わって池に入れるのは12時半」とのアナウンス.
現地を離脱
私を含めたサークルメンバーは,一度現地を離脱.その間のことは知りません.
12時半
 

まだ水が多く残る.
「田中さんがまず入りますのでそれまで池には入らないでください」とのアナウンスがされるも,水位の低下と共に池を取り囲む大量の一般参加者が次々に入り始める.
(もしかしたら全員田中姓だったから入っていいと思ったのかもしれなくもない)
なお,この時点でも今回の趣旨説明等の説明はなし(「小学生は保護者と一緒に入ってくれ」等の注意なら有).

田中さんが池に到着して入った頃にはすでに参加者が入り乱れている状態.

捕獲中

 

田中さんはカメラ・マイクとNPOの案内役とともに池の各所をまわる.
一般参加者は各々がやりたい放題
「魚じゃなくてまずはヤゴ探してくださ~い」とのアナウンスが入るも,目の前に魚が沢山いる中でヤゴのみ探す子供はまずいない.
そもそもヤゴの個体数が少ないため,容易には見つけられない.
「ヤゴって何?どういう形してるの?」と親に問いかける子供も見られた(→事前に何も説明されていないのだから,事前知識のない人はどうしようもない)

泥の攪拌や参加者の踏み荒らしにより,イトモロコやゼゼラ等の小型魚を中心に瀕死個体や死体が池の各所に浮く.
瀕死の大型魚(コイやカムルチー)も散見
(→捕獲して岸辺に持っていっても,受け入れ拒否されリリースしている案件を目撃したため,瀕死になるのも当然)
「ヤゴはこの黒いケースへ」というアナウンスはあったものの,魚については特に耳に入らず.

イメージ 1
14時台?
「池から上がってください」とのアナウンス
池の脇に立っていると,NPOの人に声を掛けられ,魚に詳しいか聞かれ,答えると同定作業を手伝ってくれと言われる.そのまま付いていって魚集計所へ.
同定選別作業開始
参加者へ「とった生き物を持ってきてください」とのアナウンス
集められた水棲生物のうち,大型魚以外の選別を任される.
バットやバケツが圧倒的に不足していたうえ,泥水しかないので作業はあまり効率的に進まず.
同定作業には,私含めた大学生4人,市環境課OBという方,NPO,ほか(誰だか知らない)が参加.
自分以外が確実に魚を識別できていたかは不明.
専門家なんてどこにもいない.
 
そもそも半数近くが死んでいるなか,集められた魚は過酷な環境に置かれ続ける.
中盤になった頃,エアレーションがすこし投入されるが,時すでに遅し.
作業場が大量のギャラリーに囲まれていたため(当たり前),知らぬ間に周辺が三角コーンとバーで仕切られていた.
 
途中で「ニシシマもいた」「ドジョウは3種」という情報が流れるも,私がバットに分けられたドジョウ類をすべて見たところ,ニシシマドジョウなんて1匹もおらず,ドジョウとトウカイコガタスジシマドジョウだけであった.
(同定が合ってるかの最終チェックが一般参加学生に委ねられているとかびっくりだなあ.信頼してくれているのはとてもありがたいけれど,テレビ収録してるこんな現場でそれでいいのかという複雑な気持ち)
 
「地元の○大学や○高校,○農林高校が協力して作業してくれるなんて素晴らしいですね~」みたいな言葉が周りから聞こえてきたけど,え,何言っとんねん.さりげなく美談っぽく言ってるけど,俺らいなかったらどうするつもりだったんだよ.と,心の中で思いつつ作業を続ける.
イメージ 2
田中さん登場
選別作業の脇でNPOの人からとれた生物の説明を受ける.
(その間ひたすら同定していたため,周りの様子・具体的内容は不明)
田中さんの収録終わる.集計・撮影は続く.
帰りがけに「作業ありがとうございます」と田中さんに一声かけていただき,良い人だなあと思うも,目の前の作業を続ける.
 
次々に追加の魚(死体)が来る中,NPOの案内役の人が各魚類の説明をする撮影が脇で始まる.このころ,撮影用の綺麗な水が現場に置かれていた.
 
少し脇に目を向けると,カゴに入れられたミシシッピアカミミガメと参加者がふれあっていた.
 
最後は計数作業をおこない,NPOの人がスマホにメモしていく.
この時点でフナ類やヨシノボリ類は誰も同定選別してくれていなかったので,選別.
再放流騒動
大型魚は少し離れたところに置かれていたため,どのような状況にあったか不明.そっちには同じく手伝っていた高校生がいたのかな?
 
そちらのほうから,コイやカムルチーを池に戻す戻さないという話が聞こえてくる.
ここまでしておいてそれはありえんやろうという会話を小型魚同定界隈で話す.
 
その辺のNPOの人などに少し説明(たしかにカムルチー環境省の生態系被害防止外来種リストには掲載されておらず,駆除の優先順位が低く負の影響が比較的小さい魚ではあるけれど,池のような閉鎖環境だと影響が出やすかったりもするのでそういうのは主催側で判断すべきだと思いますがどうなんでしょう.といった内容)
なぜそんな話題が上がっているのか疑問をもつ.そういえばこのイベントの趣旨も目的も何もまだ知らされてないやということに改めて気付く.
大型魚の置かれていたところへ移動
ここまでしておいて大型魚が全部戻されてしまってはたまらないので,サークル後輩が「カムルチー処分するなら何匹か食用に貰っていってもいいですか?」と関係者っぽいおじさん(→トンボ池を守る会会長)に聞くと,「いいよもってけもってけ」
ゴミ袋をくれたので,カムルチーを3匹ほど詰める.おじさん「もっと持ってけ持ってけ」
まあ美味しいし食料になるから持っていくか~と流され,最終的に15匹お持ち帰り.
イメージ 3
16時半過ぎ・現場離脱
カムルチーが弱ると嫌なので,ここで現場を離脱.
この間も魚の資料撮影は続いていた.
 
最終的にその他の魚がどうなったのかは知らない.
(ネット上の情報だと,ヘラブナは放されたという)
 
ネット上の情報では,釣り人勢力という謎勢力ががこのイベントに関わっていることが読み取れるが,当日私は直接ぶつかっていなかったように思われる.
池の護岸側にタライ等をもって居座っていた人たちが釣り人勢だったのではないかと考えられる.
→地元漁協関係者
 
以上が,私が当日に見聞きした内容を時系列でまとめたものです.
同定作業開始後は現地全体の様子を把握することができませんでしたので,他の場所(大型魚集積所等)で何が起きていたかは定かではありません.
 
追記(2018年3月8日)

当日見聞きした内容では不十分・曖昧だった事実関係について関係者側に直接確認しましたので,明らかにできる情報を追記します.
トンボ池を守る会やNPObirthなどの主催関係者らに確認したところ,以下のようなことが分かりました.
 
<前提>
・番組のスタンス:番組の補助を受けつつ,地元の池関係者らが主体となって水抜きし,問題を地元住民によって解決する

・主催:トンボ池を守る会(以後,守る会と表記)

・今回の目的:トンボ池のヤゴを守ること

・トンボ池の土地管理者は国土交通省(トンボ池は木曽川の河川敷に位置している)

笠松トンボ池近隣の小学校では,校内プールのヤゴをトンボ池に放す等の活動をしている

・NPObirthの今回の役割:確認種の解説,出現種から見た環境の解説,生物種撮影の補助等,地元民との協力による各種個体数の把握

NPOは撮影に至る段取りや水抜き依頼者とのやり取り,運営方針等の詳細を知り得る立場にはない
 
<経緯>
・昨年12月,「守る会がすべて実施・責任を持つ」として守る会が国交省木曽川上流河川事務所から許可を得た.その上で,テレ東「池の水ぜんぶ抜く大作戦」に応募

・1月末,守る会が二度にわたり関係者の現地確認案内(ロケハン)を行い,2月中に実施することを受け入れた

・収録前,木曽川漁協から守る会側へ,漁業権を有するヘラブナに関する申し出・要望があり,池のヘラブナの管理については漁協関係者に任せることで守る会・漁協間が合意
 
<当日>
・事前に守る会が交渉していた現地の専門家は当日来られなかった

・現地に集まったのは想定を超える数,不特定多数の参加者であった

・事前説明がないまま不特定多数の参加者が一気に池へ入ったため,トンボ池におけるヤゴの保護事情などを知らない人も多く,「まずヤゴを捕ってくれ」という進行指示への理解は薄かった

・現場では守る会会長や番組スタッフが拡声器によって適宜注意喚起や進行指示を出していたが,人が多すぎて十分に伝わりきってはいなかった

・魚の回収や運搬といった役割分担が行われず,生物のスムーズな移動がなされなかった

・捕獲した生物に対応できるだけの数・サイズの生物収容容器が用意されていなかったため,回収・選別作業に支障が出た

・生物の仕分け作業者(=水棲生物の知識を有する人)の不足は明らかであったため,NPOや番組スタッフが生物に詳しそうな人を急遽現地で集めた

・主催・進行側の人間が不足していたため,一般参加者への捕獲生物の紹介・説明等も行えない状態であった

・守る会側との合意通り,漁協関係者は現地で池のヘラブナを管理していた

外来種は守る会が役場の協力を得て処分
 
 出すことのできる情報としては以上になります.
結果として,大半の問題は番組側と関係者間での調整・準備不足,および当日のコントール不足から発生したものであったことが分かりました.
突発的な問題もあったようですが,事前の入念なチェックがあれば防げたであろう点も多く,今後同様の作業・イベントを企画する際には事前に留意しておくべきことだと言えます.
 
なお,上記の内容はあくまで今回の事例に関してのものですので,他の地域での収録・イベントについてはいっさいあずかり知らぬ別件であり,一概に評価することは適切でないという立場・見解であることを念のため示しておきます.

また,番組制作サイドからはこの件に関して以下のコメントをいただいています.
『今回の笠松での取材に関して、制作側の不備やロケの進行についての批判等が少なからず出ていることは承知しています。皆様のお声には真摯に向き合い、反省すべき点は反省して、今後の番組制作に生かしていきたいと思います。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。 池の水制作スタッフ』
 
2018/03/13:記事のリンク追加,一部文の修正(内容は未変更)